無死一塁の送りバント:得点確率ベースの損益分岐点(概算)
2026-04-10
考え方
「バントしたときの得点確率」と「打ったときの得点確率」が等しくなる打率を求めます。
使用する得点確率(本記事の表より抜粋)
| 走者状況 | 無死 | 一死 | 二死 |
|---|---|---|---|
| 走者なし | 26.8% | 15.5% | 6.7% |
| 一塁 | 41.6% | 26.5% | - |
| 二塁 | - | 39.7% | - |
| 一二塁 | 61.0% | - | - |
出典: Tom Tango, tangotiger.net/re24.html(MLB 2010-2015)
①バント側の得点確率
バント成功率100%の場合
結果は一死二塁(得点確率39.7%)です。
現実のバント成功率(NPB平均約84%)を加味した場合
- 成功(犠打): 発生率84% → 一死二塁 → 得点確率39.7%
- 失敗(走者進めず): 発生率14% → 一死一塁 → 得点確率26.5%
- バント安打: 発生率1.5% → 無死一二塁 → 得点確率61.0%
- 併殺: 発生率0.5% → 二死走者なし → 得点確率6.7%
加重平均:約37.9%
②ヒッティング側の得点確率
打った場合の結果を4パターンに分け、それぞれの得点確率を掛け合わせます。
- ヒット: 発生率=打率(BA) → 得点確率 約72%(※単打・長打の加重平均)
- 四死球: 発生率9% → 無死一二塁 → 得点確率61.0%
- 併殺打: 発生率10% → 二死走者なし → 得点確率6.7%
- その他アウト: 発生率=残り → 一死一塁〜二塁 → 得点確率 約30%
式にすると:
ヒッティングの得点確率 ≒ 0.415 × 打率 + 0.309
検算:打率.250のとき → 0.415×0.25+0.309 = 41.3%(実際の無死一塁の得点確率41.6%とほぼ一致)
③損益分岐点
バント側とヒッティング側の得点確率が等しくなる打率を求めます。
バント成功率100%の場合
0.415(ヒットの得点効果) × 打率 + 0.309(四死球・併殺等の合算) = 0.397(バント成功時の得点確率)
打率 ≒ .213
バント成功率84%(NPB平均)の場合
0.415 × 打率 + 0.309 = 0.379
打率 ≒ .168
まとめ
- バント成功率100%: 損益分岐点は打率 .213
- バント成功率84%(NPB平均): 損益分岐点は打率 .171
この打率を下回る打者であれば、バントの方が得点確率が高くなる計算です。併殺打の多い打者(ゴロが多い・足が遅い)ほど分岐点は上がり、.240付近まで上昇する場合もあります。
注意事項
- 得点確率の数値はTom Tango, Run Expectancy Matrix(MLB 2010-2015)に基づきます
- 各結果の発生率は概算値です
- この計算は出典のある公式データではなく、上記の前提に基づく概算です
- 併殺率・四死球率は打者によって大きく異なるため、個別の打者では結果が変わります
参考:得点期待値ベースの損益分岐点
本記事は得点確率(少なくとも1点が入る確率)に焦点を当てていますが、得点期待値(そのイニングで入る平均得点)ベースの損益分岐点も参考として記載します。
得点期待値ベースの損益分岐点:
- DELTAの岡田友輔氏が2014〜2018年のNPBデータから算出。バント成功率100%想定で打率.103(出典: https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53601 )
- PRESIDENT Onlineでは実際のバント成功率(約83.6%)を加味し、出塁率.127としています。この出塁率を下回った50打席以上の打者は3名のみ、うち2名は投手でした(出典: https://president.jp/articles/-/63435?page=6 )
得点期待値の低下幅(0.85→0.67 = -0.18点)は得点確率の低下幅(41.6%→39.7% = -1.9%)よりはるかに大きいため、期待値ベースの損益分岐点は確率ベースよりかなり低くなります。
なお、これらの出典では損益分岐点を打率や出塁率で表していますが、得点期待値には四死球や長打も大きく影響するため、本来はOPSのような総合指標で評価する方が適切ではないかという疑問もあります。OPSベースでの損益分岐点がどのくらいになるかは興味深いテーマです。